2005/12 Cerisier Topics

第15回トピックは、クリスマス料理のお話です。

クリスマス料理と言うと、すぐに思い浮かべるのは、ロースト・チキン、ロースト・ターキーですが、最近、レストランのメニューで、秋のジビエの季節になると野鴨と共に良く使われ、クリスマスの特別料理にも使用頻度の高い鹿肉についてお話します。西欧は、肉食の文化で古代ローマ時代には、いのししや鹿,ウサギ、雉、鴨、つぐみ、山鳩等、手に入る野鳥獣は、なんでも食べていたと思われます。農耕、牧畜の発展と共に、やがて狩猟は、王侯貴族達のスポーツとして変わっていきましたが、野鳥獣を食べる習慣は今日まで受け継がれています。その中でも鹿肉はおそらく人類が最初に口にした肉の一つで、食用肉としての歴史は古く、今日でもヨーロッパでは、秋になると市場や肉屋さんの店頭に毛のついたままの小鹿がぶらさがっている光景を見る事ができます。しかし、乱獲や環境破壊のために絶滅に瀕している種類もあり、多くの国では禁猟区を設けたり、捕獲量の規制をして、保護と育成に努めています。

  鹿肉の分類

分類には、諸説があるが、一般には7種類に分けられます。

*ジャコウジカ亜科

ヒマラヤ、チベット、シベリア、サハリン等に分布する。

*キバノロ亜科

中国大陸、朝鮮半島に分布する。キョンと共に、鹿の祖先型に近い原始的な種類。

*キョン亜科

中国、インド、東南アジアに分布する。

*オジロジカ亜科

南北アメリカ大陸に分布する鹿で多くの属種がある。

*ヘラジカ亜科

極北部に分布する。

*トナカイ亜科

極北部に分布する。家畜として飼育している所もある。

*シカ亜科

最も種類が多く、ニホンシカ、アカシカ、ノロシカ等が含まれる。インド,東南アジア,中国、日本、ヨーロッパ,北アメリカに分布する。

又、野生の鹿は日本では、非常に少なくなったが、ヨーロッパではまだ沢山います。

  鹿 Chevreuil,Venison

一般にのろ鹿の事でヨーロッパではポピュラーな狩猟獣。生後6ヶ月までをファン(faon,18ヶ月までをシュヴリヤール(chevrillard,20〜25Kgになる雄をブロカール(brocard,雌をシュヴレット(chevrette)と呼びます。鹿の総称はセール(cerf)と言い,特に赤鹿の事で他にダマ鹿も獲れます。鹿肉の一番おいしいものは2歳までで、旬はヨーロッパでは晩秋から冬にかけて、日本では5〜6月だと言われています。フランス料理では古くから珍重されてきた素材で、一般にワインに野菜や香料を入れたマリナードに漬け込んでから調理される事が多い。日本でも“もみじ”と呼ばれて昔から食用にされていて、みそ味で臭みを消して、煮物、鍋物にして食べるのが一般的です。

  鹿肉の部位及び調理法

*肩肉

前脚につながる肩の部分。赤身肉が多く、比較的硬いので煮込み料理に使う事が多い。

*腰肉

脂肪層が少ないので、調理する時は、脂肉を刺したり、脂肉を巻いたりしてローストする。

*鞍下肉

背部と股部にはさまれた部分。背脂を刺して、マリネしてから調理する。マリネした野菜、筋、汁でソースを作る。

*背肉

この部分は丸のまま調理することは少なく、コートレットやノアゼット用の切り身を取ります。調理方法は、鞍下肉と同様にすることが多い。

*フィレ肉

鞍下肉の骨の下にある一番柔らかい部分。フィレ・ミニョンステーキにしたり、背肉の調理方法と同様にすることが多い。

*腿肉

後ろ脚の付け根にあたる部分。塊をタコ糸で縛りマリネしてからローストにしたり、マリネした汁で煮込んだりする。

一般に若鹿の肉は、柔らかくて食べやすいが、成長した鹿肉はかたいので、ワインに野菜、香辛料等を入れたマリナードに漬け込んでから調理します。マリネする事で独特の臭みを消す事が出来ます.又、豚の網脂や背脂を刺したり、包んだりして脂肪分を補います。

鹿肉は火を通し過ぎると硬くなるので、強火で手早く調理しミディアム・レアーぐらいで食べるのが良いでしょう。部位別に多様に調理されるが、内臓は一般には食べません。いずれの場合もソースには、ジュニエーブルや胡椒、すぐりの実等を使って特有のにおいやくせを和らげる様、工夫をすると良いでしょう。

付け合せには、栗、りんご等フルーツのピュレや甘煮、すぐりのゼリーなど甘みのあるものを添える事が多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Noisettes de Chevreil « CERISIER »
                                小鹿のノアゼット・ステーキ“スリジェ”風

 

鹿肉の代表的な料理名及び小鹿のノアゼット・ステーキ“スリジェ”風の作り方

Civet de Chevreuil シヴェ・ドゥ・シュヴルイユ 鹿肉の煮込み

シヴェとは野禽の煮込み法の一種で、仕上げに血を使って、ソースに濃度をつけるのが特徴で、くせのある鹿肉にも良く合う料理法です。

Selle de Chevreuil sauce Poivrade セル・ドゥ・シュヴルイユ、ソース ポアヴラード

鹿の鞍下肉のロースト、ポアヴラード・ソース

鞍下肉を骨付きのまま、脂肉で包み、ローストし,薄切りにする。フランスのレストランのメニューに秋になると必ずと言っていいほど登場する最も美味な有名な鹿肉料理です。

Côtelette de Chevreuil au Genièvres コートレット・ドゥ・シュヴルイユ・オ・ジュニエーヴル

鹿のコートレット、ジュニエーヴルの香り

鹿の背肉から取り出した骨付きロース肉のステーキ、ジュニエーヴルの香り高いソースを添える。この料理には。りんごの甘煮が必ず添えられ、鹿独特の臭みを消し、さらにジュニエーヴルの香りを引き立てています。

Noisettes de Chevreuil Grand Veneur ノアゼット・ドゥ・シュヴルイユ、グラン・ヴヌール

鹿のノアゼット・ステーキ、グラン・ヴヌール風

鹿の背肉から取り出した円形に形を整えた切り身のステーキ、グラン・ヴヌールとは狩猟頭の事で代表的な

クラシック料理です。付け合せにポテトや栗のピュレを添えます。

Noisettes de Chevreuil Saint-Hubert ノアゼット・ドゥ・シュヴルイユ、サンテュベール

鹿のノアゼット・ステーキ、サンテュベール風

これも代表的な古典料理で、すぐり入りのソースを使用しヌードルや茸などと一緒に盛ります。

 

Noisettes de Chevreuil « CERISIER » “スリジェ風“鹿肉のノアゼット・ステーキ

鹿肉のクラシック料理のグラン・ヴヌール風とサンテュベール風をミックスし、フォワグラの網焼きを添えてみました。

材料
 鹿肉の背肉 1kg、赤ワイン 1本、玉ねぎ 1個、人参 1本、大蒜 1片、赤ワインヴィネガー少々、タイム、月桂樹の葉、粒胡椒適宜。

 子牛のだし汁又はジビエのだし汁 500cc、すぐりのジャム40g、コニャック

作り方
 @ 鹿の背肉は筋、骨をはずし野菜、香料と供に赤ワインで2日間マリネします。この間、時々肉を返し、全体に良く漬かるようにします。
 A 肉をマリナードから取り出し、円形に形を整えノアゼットを作ります。
 B 鹿の骨、筋、野菜をオーヴンで焼きます。マリネした汁を鍋に入れ、沸かし、細かい目の漉し器で漉します。

 C 鍋に骨、筋、野菜、マリナードを入れ、煮詰めます。子牛のだし汁、粒胡椒を砕いて加え、ポワヴラード・ソースを作ります。

 D ノアゼットの両面に塩、胡椒をし、強火でソテーし、ミディアム・レアーの状態に焼きます。
   肉を取り出し、焼き脂を捨て、コニャックで
デグラッセしCのソースを加え、煮詰めます。
   もう一度漉して、すぐりのジャムを加え、味を整え、バターでモンテします。

  E 皿にノアゼットを盛り、ヌードルのバター炒め、ポテト・グラタン、洋梨のコンポート、木苺、スグリ、マロンなどを盛ります。
   ノアゼットの上に
フォワ・グラの網焼き、野生のきのこを盛り、全体にソースを流します。秋から冬の香りのする一品です。
   鹿肉が手に入ったら是非、お試しになってみて下さい。

 次回トピックはフランス菓子の“ガレット・デ・ロア”Galette des Roisのお話を予定しております。